マンションでの暮らしを長く、快適に続けるためには、建物の適切な維持管理が欠かせません。
特に、年数を経たマンションでは、計画的なメンテナンスが重要となりますが、その実施自体に法的な義務があるのか、あるいはどのような理由で行われるのか、疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。
ここでは、マンションの維持管理における重要な側面について、詳しく見ていきます。
大規模修繕に法的な義務はあるか
マンションにおける大規模修繕の実施義務を直接定めた法律は、建築基準法、区分所有法、マンション管理適正化法などの関連法規には見当たりません。
したがって、分譲マンションに大規模修繕を法的に実施する義務はありません。
しかし、賃貸マンションにおいては、貸主(オーナー)が建物を良好な状態に保ち、賃借人が安全かつ快適に使用・収益できる状態を維持する義務を負います。
これは民法第606条に基づくもので、建物の修繕義務が含まれます。
法的な実施義務は存在しない
分譲マンションに大規模修繕を法的に義務付ける規定は、現行の建築基準法やその他のマンション関連法規には存在しません。
賃貸マンションには修繕義務がある
賃貸マンションのオーナーは、民法第606条に基づき、賃貸物件の維持・修繕を行う義務があります。
これにより、入居者は安全で快適な居住空間を享受できます。

大規模修繕を行う理由
法的な実施義務がない分譲マンションであっても、マンションの維持管理において大規模修繕は非常に重要な役割を果たします。
その主な目的は、建物の長期的な健康を保つことにあり、具体的には以下の3点に集約されます。
安全性の確保
建物の経年劣化や、自然災害、その他の外的要因による損傷は、居住者の安全を脅かす可能性があります。
大規模修繕では、これらの劣化箇所を計画的に修繕し、建物の構造的な健全性を保つことで、居住者の安全を確保することが最優先の目的となります。
資産価値の維持
マンションの設備や外観が老朽化すると、居住性だけでなく、物件としての資産価値も低下する恐れがあります。
大規模修繕を通じて建物の美観を回復させ、老朽化の進行を遅らせることで、マンションの資産価値を維持、さらには将来的な価値向上にも繋げることが期待できます。
住環境の向上
大規模修繕は、単なる老朽箇所の補修にとどまらず、より快適な住環境を整備する機会でもあります。
例えば、最新の耐震基準に適合させるための補強工事や、バリアフリー化、断熱性能の向上などを同時に行うことで、入居者全体の満足度を高め、より質の高い居住空間を提供することができます。

分譲マンションが負う義務
分譲マンションには、大規模修繕の実施義務はありませんが、マンションを適切に維持管理するために、いくつかの法的な義務や、それに準ずる責務が課せられています。
外壁タイルの調査
建築基準法第12条に基づき、マンションの外壁等については、5年に一度の定期的な調査(打診調査など)が義務付けられています。
これは、タイル剥落による事故を未然に防ぐための重要な措置です。
ただし、調査から3年以内に大規模修繕を実施する予定がある場合は、その大規模修繕の時期まで調査・報告の期限を延長することが可能です。
管理組合への加入
区分所有法第2条により、分譲マンションの区分所有者は、建物およびその敷地、附属施設の管理を行うための組織である「管理組合」への加入が義務付けられています。
管理組合は、マンションの維持管理計画の立案や、修繕工事の決定などにおいて中心的な役割を担います。
マンション設備の維持管理
マンション管理適正化法では、マンションの適正な管理が求められています。
同法は、管理組合の設立や運営に関する規定を定め、管理の適正化を推進しています。
具体的な修繕周期の義務はありませんが、マンションの維持管理に必要なコストを判断し、総会での決議を経て、適切な維持管理を行う責任が管理組合員全体にあります。
まとめ
マンションの大規模修繕には、分譲マンションに法的な実施義務はありません。
しかし、賃貸マンションには民法に基づく修繕義務が生じます。
分譲マンションであっても、建物の安全確保、資産価値の維持、住環境の向上といった目的のために、計画的な大規模修繕は不可欠です。
また、外壁タイルの定期調査、管理組合への加入、マンション設備の維持管理といった、マンションを適切に管理するための義務は分譲マンションにも課せられています。
これらの義務や、自発的な修繕計画の実施は、マンションの長期的な快適性と安全性を守るために重要と言えるでしょう。